利き酒(ききざけ)のコツ(利き酒競技会必勝法!?)

酒を利く、耳慣れない言葉ですが昨今巷で流行ってる「お宝」探し等をする皆さん方がやられていますいわゆる目利きの酒版であり、又、現在市場で流通していますいろんな種類のお酒を、お料理との相性、飲用の最適温度など、よりおいしく飲むためにも知っていると良いことだと思います。

ここでは我々、酒造りに携わるものが平素やっています利き酒(難しい言葉で「官能検査」という)の上達方法、さらに、お酒をおいしく飲む為知っておかれて損のないことなどを記してみます。

まず、一番心がけておかないといけないことはいわゆる「再現性」を持つ、ということです。
ぱっと香りを嗅ぎ、あるいは口に入れて味わったとき、「あっ、これ○○の・・・」というような表現を自分の言葉で出来るようになること。そして、次回同じものにお目に掛かったとき前回と同じ表現を出来るようになること。です。
 じつはこれが出来るようになると利き酒は出来たも同然なんですが、いかんせんなかなか思うに任せません。そこでどうするか・・・。
 自分の頭の中に引き出しを持つ
自分の生涯で経験した香り、味を言葉で表現し頭の中引き出しに見出しを付けてしまっておく。
「あっ、○○社の化粧品の香り、」「○○チョコレートの味」何でも良いんです、知ってる限りのボキャブラリーを駆使して自分の言葉に置き換えて尚かつ、次に同じものが出てきたときに頭の中の引き出しの見出しの中から同じものを引っぱり出して、当てはめる、という作業が出来るように心がけてみましょう。
 それを書く
一般に飲み会やなんかの酒の席に筆記用具持参で、等という野暮なことはいいませんが、いわゆる利き酒の場等では自分で表現した言葉を書き記す事が非常に大事です。人に見せるんではないんでなんだって良いんです、自分の再現性をより、確かなものにするためにも是非実行して欲しい事です。

利き酒用語(例)

ボキャブラリー 利き酒の順序
色に関して 透明 光沢 混濁 茶褐色 黄金色 琥珀色 テリ 水様 
冴 等
香りに関して 果実香 甘酒臭 紙臭 木香 老香 酸臭 吟醸香
力強い 穏やか 華やか 重い 新酒香 炭臭 枯れた 
スパイス 麹臭 調和 蒸米臭 等
味に関して こくあり こくなし 芳醇 丸い あらい 濃い 薄い
重い 軽い 淡麗 滑らか 綺麗 渋味 キレ 旨味
後味 押し 幅 含香 酸味 調和 等 

次に実際の利き酒の作業について
まず、あなたが女性でしたら当日は香りの強い化粧品は避けましょう。お洒落な貴男もコロン等は付けないこと!。
恐らくテーブルが2組用意され5,6点の酒がそれぞれ並びそれを合わせるというマッチング方でしょう。さあ、酒がずらりと並びました。いよいよ利き酒です。

グラスに注いで、まずは香りを・・・・、一寸待った!それをやる前にまず、色のチエックです。
注ぐ酒の量にもよりますが酒には違いこそあれ、幾ばくかの色があります。黄金色、黄褐色、琥珀色、何でも良いんです、分かる言葉でまず表現してみましょう。無色透明等も良いでしょう。
 次に香り。利き酒の現場では殆ど統一されていますからあまり問題はないんでは、と思いますが温度が低いと香りの立ち方が少なく、嗅ぐのが難しい事もあります。瓶が露を持っていたとかグラスが露を持つ等の時はグラスに注いだ酒をグラスを手で暖めてやれば香りも立ってきます。そして書き留めます。

 次に口に含む。少量をなるべく舌の上に酒を乗せる感じで口に入れます。すっと舌の上にのっかって来ましたか?ごつんとはいってきましたか?濃い、淡麗などの表現が出来ますね。
そしてそのまま口を若干あけ息を吸い込んで鼻から抜きます。少々行儀悪い感じですが「ジュルジュル」と口の中がいいます。このとき鼻から抜けるお酒の香りが分かります。これ、「含み香」といって私達が官能検査をするときのひとつのキーになるんですが、嗅いだだけでは分からない香りもよく分かります。「バナナの香り、バラの香り、ナッツの香り」何でも良いんで再現性有る言葉で表現しましょう。

 次に・・・。ここで飲んでしまう、という手も有りです。いわゆる「喉越し」を見ることになります。(余談ですがビールの場合「喉越し」を見る為飲みます。なんとうらやましい!といわれそうですが仕事に当たる出荷技師さんはご苦労様です。)しかし清酒の場合は実際は吐き出します。
その時からになった口の中の状態は如何でしたか?お酒が滑るように出ていって直ぐに口中から酒の気配が消えたでしょうか?又は、舌の奥の方に余韻が残ったでしょうか?これをお酒のキレ、といいます。

 以上のような順番で(目・・・色彩 鼻・・・香り 口・・・味わい)酒を調べるということが利き酒の実際です。
 そうそう、大事なことがありました。次のお酒に行く前に前のお酒を自分のグラスから完全にのぞいておくこと。3分の1ほど残っていてももったいないでしょうが空けてから次の酒に移りましょう。口の中は特にゆすいだり、はしないでも大丈夫。新しい唾液が直ぐに舌を覆ってくれますので。

迷ったときは・・・。
数が多いと頭の中が混乱してしまうことがあります。「あの味の酒が無い!」「色がどれだったかな」等。こういうときはあれこれ悩まず、第一印象を大切にされることをお奨めします。吐き出すとはいっても若干の酒気は口に中に残ります。若干の酔いも手伝ってくれこのようなことが有ったときには、未だ神経が充分活躍している時の感覚を大事にした方が良いと思います。



以上がだいたい皆さんが利き酒会等の場でしっておかれたらよいであろうことです。
しかし、この方法はいわゆる酒の鑑定、判別方法であり、皆さんが普段色々なお酒を楽しまれる際にはここまでされることはなさらないでも良いと思います。特に、一昔前まであったお酒の級別(特級、一級)の判別審査等で行われていたやり方を踏襲している部分も有りますので。(特に、級別審査では、酒の欠点を探す、というやりかたです。・・・他人とのつき合いでも人の長所を見つけるより短所を見つける方がやりやすいですし、体操競技等でも審査は減点法ですから。)

 しかし、今は級別はなく、むしろ級別では表に出なかった、色もあり、練れた熟成香のあるおいしいお酒など、非常に個性的でバラエテイに富んだお酒の楽しめる時代です。そういった意味での新しい利き酒のやりかた(料理との相性等)を知っておかれたらと思います。その意味ではワインの利き酒方法(欠点と見るのでなく個性として見る。ワインの利き酒用語は誉め言葉が多い)は非常に参考になりますし、現在私達が醸造していますお酒もそういった目で見ていただけましたら嬉しく思います。

お知らせ
島根県酒造組合では毎年一般の方対象の利き酒競技会を開催しております。
成績の良い方は東京で行われます全国大会に無料御招待です。皆様奮ってご参加下さいませ。