お酒造りと音楽
もろみに音楽をきかせてみたら・・・

自分が音楽が好きな関係で、お酒を造るときに音楽を取り入れることは出来ないだろうか?又、何とか仕事中も音楽に接していたい、あわよくば一緒に酒仕込みに携わる人もいい気持ちになってもらえれば・・・、と色々思うところがあって蔵の中にオーデイオを持ち込み音楽を流すことにしてみました。

よく牛舎に音楽をかけてみたら牛乳の収量が上がったとか、花に聞かせてみたところツルがスピーカーをぐるぐる巻きにしたとか、野菜が大きくなった、等、このての話は結構聞きます。
 牛は哺乳類であり耳もあることから良い音楽に気持ちが安らいで・・・と言うことは何となく分かるような気がするんですが花や野菜には耳もなし、音楽を理解して精神状態が・・・と言うのは果たしてどうなのかなあと思っていました。
恐らく音楽が鳴り渡る部屋の空気振動が植物にとって有意義なものであるのではないだろかと自分なりに理解をしています。


酒の仕込みもこれと同じように微生物とはいえ酵母や麹菌に耳があるはずがなく空気振動が微生物の増殖に有効では?ということを考えて環境を作ることにしました。


環境を作るいっても単に音の起こす空気振動のみを与えてやるのが目的ならば仕込みタンクにウーハー(スピーカー)でもぺたっと張り付けてやり、又はバイブレーションを起こす機械を用いてやれば良いんでしょうがそれではあまりにも色気がないので、蔵の隅の方から土壁に向ける格好でスピーカを配置し土壁から跳ね返った音が蔵じゅうにバラ撒かれるようなイメージでセッテイングをしてみました。


さて、何を聞かせたら良いものやら・・・。
まず、思ったのはコンスタントな振動です。強弱や起伏の激しいものはあまり良くないだろう、
なるべく一定のリズム、サウンドが得られるもので人間様にも心地よいものを、との思いでジャンルや曲を探しました。
 清酒ですから演歌も考えましたが後述のようなこともあって却下。
自分の家にある音源の在庫とも相談の上バッハのオルガン曲、チエンバロ曲などのバロック音を選びました。バロック曲の傾向ではその時代の楽器事情等から大きい音小さい音の指示はあっても強く、弱くの指示はあまり有りません。その分割合に一定した振動が得られるのではないだろうかと考えました。

バッハ オルガンcd音源に使った中の一枚  バッハ オルガン名曲集 カール リヒター


さて曲が決まり、いざ音を出してみました

じゃーん!

なんと良いじゃあありませんか。20機のホーロータンクに共鳴して、まるで中世ヨーロッパの教会の中でオルガンが鳴ってるようです。(ヨーロッパ行ったことない・・・。(^^;))
安物のスピーカーが銘機に変わりました。
余談ですがその時代のオルガンは大理石などの響きの良いところで演奏することを前提に作られていたそうです。器(うつわ)も楽器の内、と言ったところでしょうか。

「これはいいわい!」
でももしかして曲を演歌に変えたらカラオケでエコーを効かせた・・・。
(風呂で唱うカラオケ状態!?)

ひとつジャンルでは人間様が飽きてしまうのではと思い、またまた個人の趣味からジャズピアノトリオを加えました。


今年は、大吟醸と名の付く酒を2本仕込みましたがその際に実行してみました。エンドレスにして流しっぱなしです。
昨年のものと比較して有意差が有りました!とすれば格好も良いんですがはっきり言って良く分かりません。米の性質、気候の状態など諸条件皆違うため、又、1シーズンで比較できるほど大吟醸もしこみませんし・・。
 しかしできた酒は鑑評会でも良かったですし出品しない方も評判は良いです。
あながち全く無駄骨だったわけでもないんでしょう。
 何より昼間の蔵内の喧噪が収まった夜の仕込み蔵から静かにバロック音楽が流れているのを聞くと何とも言えず厳かな気持ちになり「又明日も頑張ろう」と思ってしまいます。

投資額も殆どなく、効果の程も著効あったとは言い難い音楽蔵の冬でしたがお陰で又ひとつ楽しい酒造りになりました。

来酒造もこのまま続けます
仕込み蔵は夏の間は私の趣味の楽器の練習場として使わせて貰うことにしましょう。



皆様のご意見をお待ちいたします。